HOMESTUCKって何?〜undertaleとの関係も添えて〜

こんにちは廿です。前回の更新から3年ぶりの新規投稿となりますが長文確定ですので前置きは割愛してさっそく本題へ入ります。

HOMESTUCKって何なんだ〜?

この記事を書こうと思った発端はホームスタック(HOMESTUCK)でweb検索をしても「とにかく日本語での情報源が少ない」ということからです。
ここで一つ記事を書けば一つ検索に引っかかるページが増えますし、二つ書けばなんと二倍増えますしね!
何より「ホームスタック」若しくは「HOMESTUCK」というワードの日本語圏での検索結果で上位に表示される情報ページはデータが古い、または間違っている、こんなのは優しいもので悪気もないのですが、ちょっと悪意を持って情報操作、印象操作を行っているのでは?と言えるものもあり、これは書かないとマズイのでは…と思い至った次第です。
そもそも、ごく最近まで既にホームスタック、HOMESTUCKという単語を知っている稀有な日本人の方は「ホームスタック?知ってる〜角の生えた灰色の肌のキャラだよね!」と答えているような状況でした。それ全然知ってねーから。作品のポジション(?)等の近さから私はホームスタックをドラゴンボールに例えることが多いのですが、この発言は「ドラゴンボール?知ってる〜触覚の生えた緑色の肌のキャラだよね!」と言っているようなものです。
この記事を読んでいる方のドラゴンボール認知率は100%と断定してグイグイ言ってしまいますが、残念ながらこれは会話のキャッチボールに失敗しています。
間違ってはいないけれどドラゴンボールと言ってナメック星人と返ってくることには違和感がありますよね。ナメック星人と言えばドラゴンボールだけど、ドラゴンボールと言えばナメック星人ではないためです。


以前簡単な概要をまとめました。


  


要するにホームスタックとは、「海外のWEBコミック」「人間の子供4人が主人公」「ゲームを起動させたことから冒険が始まる物語」です。
「ホームスタックはセカイ系」と表現されている記事もお見かけしましたが、「セカイ系」の定義がちょっと曖昧とは言え「主人公の内面描写中心で話が展開する」「主人公とヒロイン中心の物語」「主人公の生活は日常が中心でその世界を冒険する展開に乏しい」辺りには該当しないので個人的にはちょっと違うかな?と思います。目的も序盤から「世界(日常)を守る」ではなく「もう地球は破壊されるから脱出して新しい世界を創造しようぜ」ですし。
作者ご本人はホームスタックは「現代版創造神話」と言っていて、これは読了した身としては完璧で正確な表現だと思います。
でも読む前の私はクソ鈍いこともありピンとこなかったので「ゲームモチーフで非サザエさん時空の能力バトル系サウスパーク」とか説明してほしかったかも知れません。


始まりは2009年4月13日、海外のWEB漫画家のAndrew Hussie(アンドリュー・ハッシー)氏が自身のWEBサイト「MS Paint Adventures(ミスペイントアドベンチャー)」で新作「Homestuck」を公開しました。
このサイトではHomestuck公開以前より、読者達がサイト内のフォーラム(BBSや提示板のようなもの)やメッセージBOXからハッシーへ指示を送ることで作品の展開を操作できる読者参加型形式をとっていました。
ホームスタック日本語訳のサイトで解説すると、次のページへ進むリンクは「ジョン: 飛び降りる。」「ジョン: めり込んだシェールを取りたい強い衝動に抗う。」等の表記になっていますが、これが読者が出した指示で、誰に:何をしてほしいか を表しています。作中の人物が別の人物に指示を送っているシーンなんかも出てきますが、そういったサイトの特性に対するメタ展開なんですね。
ジョン:机の上に糞をしろとうるさく言う。」や「デイブ:ヤギのように鳴き叫びながらターンテーブルに小便をする。」なんかは当時事情を知らなかった私は「突然のセルフボケ&ノリツッコミ…?ページ稼ぎか?1mmも面白くないけどきっと海の向こうでは笑いの感性が違うのだろう…」と思っていましたが、違いました。作者と読者間の重要なコミュニケーションの産物だったのです。申し訳ございません。
しかし知名度、人気が上がるにつれ読者からの指示も膨大な数となり収集がつかなくなっていきました。前述の通り読者とのおふざけ要素も多く、Homestuckの当初の完結スケジュールにも収まらないと判断された為、比較的序盤からハッシー自身が展開を完全にコントロールする方針へ変わっていきます。つまり最短ルート進行。それでも一応の完結を迎えたのは2016年4月13日ですので、なかなか苦しい道のりだったのではと思わずにはいられません。


実際にプレイできるflashのゲームパートがあったり、隠しコマンドがあったりとゲーム題材の作品だけある要素も強いですし、日本製のゲームネタが非常に多いので日本のゲーマーの方なら小ネタも楽しめるのではと思います。
また、何と言っても作中の劇伴が量質共に素晴らしいです。こちらのbandcampというサイトで、購入特典のボーナストラック以外は全て無料視聴可能ですので是非!
私自身も2015年10月にundertale(アンダーテール)をプレイし、音楽にハマり、製作者のToby Fox(トビー・フォックス)氏を調べると出てくる大量の楽曲からHomestuck本編にも興味が湧いて…という経緯がありますので本当にオススメ致します。
と言うか「undertaleのMEGALOVANIAがHomestuckでも使われてる」「トビーは一部の楽曲を提供している」といったライトな情報をUT界隈では見かけますが、Homestuckとundertale、ハッシーとトビーの関係はちょっとした繋がりだけではありません。


こちらの記事の下方のトビーのインタビュー部分でも触れられています。
初見プレイは驚きの連続。本日発売となった「UNDERTALE」のプレイレポートをToby Fox氏のメールインタビューと共にお届け - 4Gamer.net

Toby氏:
 「UNDERTALE」を開発する前の僕は,Andrew Hussie氏が手がける「Homestuck」というウェブコミックサウンドトラック制作に参加したコンポーザーとして知られていました。
 Homestuckは「コミック」といっても,音楽がついていたり,インタラクティブなアニメーション要素などもある作品で,アメリカでは大人気になったんです。魅力的なキャラクターがたくさん登場したり,いわゆるメタ表現が取り入れられている点などは,UNDERTALEにも影響を与えてくれたように思います。
 あと,UNDERTALEの開発を始めた場所は,実はHussie氏の自宅にある地下室だったんですよ。Homestuckのサントラを制作するかたわらでしたけど。だから,UNDERTALEはまさに「地下」で誕生したゲーム,ということになりますね。

――本作をほぼ1人で作り上げたTobyさんですが,クリエイターとしての原点はなんでしょうか。

Toby氏:
※中略
 僕のクリエイターとしての原点はそうですね……先ほどお話ししたように,2010年に始めた「Homestuck」のサントラ制作がはじめの一歩でした。コンポーザーとしての初仕事だったので,すごく貴重な経験だったと思います。あれがなかったら,今ほど作曲もうまくなっていなかったと思うし,自作ゲームのクオリティもずっと低くなっていたと思うので。


ようやく日本語のソースが!といった感じですが、そもそもundertaleのクラウドファンディングが成功したのはHomestuckに何年も参加していたことでトビーの知名度が上がっていたことが大きいという背景があります。
当時17歳だったトビーがMSPAのフォーラムに劇伴のピアノアレンジを投稿したことからハッシーの目に止まり、そのままHomestuckの音楽チームへ参加することに。undertaleのベース設定はハッシーがアイディアを出したとトビー自身がtwitterで語っていたり、韓国のUTオンリー参加や憧れの糸井重里氏に遭う時もトビーはHomestuckのデイブやGAME BROのTシャツを着用して出向くほどです。今は一躍時の人のトビーですが、ハッシー自身が「君の成長を見守ることが俺の人生の楽しみ」とundertaleリリース時に言ったように、トビーもハッシーへの畏敬の念を持っているように感じます。


そして同棲へ…。
英語圏の記事などでは「二人は同棲してた」とよく書かれていて、ソースどこ?と思っていましたがトビーが上記のインタビュー内でもハッシー宅でと言っているのでやはり通っていたないし住んでいたと考えて良さそうです。
Homestuck内のこのflashの最後のハッシーとトビーの体格差などにもご注目下さい。(左がハッシー、右の中指を立てているのがトビーです)


「海外のWEBコミック」「人間の子供4人が主人公」「ゲームを起動させたことから冒険が始まる物語」に追加するなら、時勢を考慮して「toby foxに大きく影響を与えた作品」でしょうか。tumblrの最初の大きなファンドームはHomestuckで、AU(パラレル)が盛んに行われたのもHomestuckが最初だそうなので「undertaleに」と言えなくもないかも知れません。
非公式の日本語訳は2017年10月現在まだ序盤のAct3ですが、google翻訳の精度も日々向上していますので気にせず英語の原文を読み進めていってもいいと思います。(実際私もそうでした)
先月スピンオフのPCゲーム「hiveswap」(ハイブスワップ)も最初の章が公開となりました。こちら
本編未読でも楽しめる内容で、英語の量も内容もHomestuck本編より簡単なのでよろしければ…!


Homestuckもundertaleのように少しでも日本で知られていくことを願っています。そしてあわよくばチャー研MADとかが作られたら…とっても嬉しいです!